[SYSTEM_LOG: SESSION_STARTED. ROOT_ACCESS_GRANTED.]
高度1万メートル。地上の喧騒(満員電車DDoS)からパージされ、天空(成層圏)という名のクリーンな実行環境へ。
この高高度における「食事」というプロセスは、単なる栄養補給ではない。それは、遠征先でのミッション成功率を左右する重要なインテグレーション(統合処理)である。
神々の領域へ
私は誠実な辺境伯(長距離通勤の要件定義er)。普段は皇都の煉獄で勤務しているが、ごくまれに蛮地(地方)への遠征の話が持ち上がる。
戦いの現場をこの目に焼き付け、世界の設計図を書く。情報は会議室ではなく、現場で発生している。その場に身を置かねば気づかないこともあるのだ。
新規案件という神々(未知)の領域に到達せんとするこの過酷な任務は、主君(社長)の政治的な駆け引き(社長が断れない、あるいは押しつけ)の末、さして実入りの期待できず、生きて(無事で)帰還できる保証がない。主君(社長)の顔が立つだけの下らないないミッションだ。
全員が死んだ目をしている皇都の煉獄の囚人たちの中で、誠実な使命感を持つ私は、鋭く声をあげた。
「わたくしが志願します!」
皇都の煉獄からの遠征
鉄の飛竜(飛行機)による移動。
普段の鉄の地竜(電車)による往復5時間のレイテンシ(長距離通勤)とは違った特別感がある。
その際、私が重要視(楽しみ)にしているものの一つが、機内での食事だ。
それ(楽しみ)がなければやっていられない。正直。
いやむしろそのために志願した説まである。
貴族席(プレミアムクラス)。広く柔らかい座席に、CAの丁寧な接待。通過する庶民の羨望の視線を浴びながら、着席する。そこのスリッパはなかなか良い。
そして、天空に到達(飛行が安定)した際に供される食事。
この上ない全能感に満たされるひと時だ。
しかし、私はこれを至高とは認めていない。BC(事業継続性)に欠けているからである。
主君(社長)ですらこの玉座に座ることをアースラ(経理)から認められているわけではない。経費で強行しようとすると「あたしも乗りたい!」と暴動を起こすであろう。
自腹で対応するにも給与がデグラデーションダウン(縮退運転あるいはアースラ(経理)の報復)している状況下、遠征時に毎回乗るわけにはいかない。
これは何度も遠征を繰り返し、その恩恵としての特典(ポイント)を必死に蓄積する必要がある。そして搭乗直前に空きがあった場合に限り、戦士(一般席)からナイト(プレミアム席)に昇格(クラスチェンジ)できるのだ。
誠実(強欲)な私は、毎回全能感を味わいたい。
私の誠実なる欲望(琥珀色の脳)が、神々の祝福(一般席でも味わえる至福)を求めて演算を開始した。
(……バハムートの囁き:お前の求めているのは至福ではない。閉鎖環境下で唯一許された、自己肯定という名のスタック領域確保だ……)
長い演算の結果、顔面から琥珀色の粘性(ヌルヌル:脳の演算の排熱)を吹き出しながら、ついに最適解を導き出した。
戦いの準備
最高の戦い(至福の獲得)には最高の戦場(座席)が必要である。
つまり窓側席の確保だ。
予約が早い段階であればそれは容易であろう。しかし、時として急な遠征命令が下されることも多い。
この場合、往々にして通路側あるいは3列席の真ん中にプロットされてしまう。
これであきらめてはいけない。
最高の戦場を用意してこそ、人々という名の自分自身から称賛(自己満足)を受ける戦いを演出できるというものだ。
まずは遠征が実行可能であることの保障として真ん中の席でコミット(予約の確定)する。
そのうえで、遠征当日までの期間。執拗かつ執拗に座席を確認し、窓側の座席の空きを確認する。
「空いた。」
最高の戦場(窓側の座席)を確保した私は、勝利の確信に酔う。
(……バハムートの囁き:忘れるな。搭乗前にマナ(おにぎり)を調達するのを……)
なめるな、バハムートよ。そのことについて抜かりはない。
ウン悪く、マスダさんの天気予報を聞き逃したとしても、おにぎりは忘れない。
ウンが悪い話はこちらの深淵を覗くがいい(懇願)
蒼穹のルーティングと機内での緊急適用(ホットフィックス)
IPL(Initial Program Loadあるいは離陸)が完了し、システムのREADY(安定飛行)が上がると、客室乗務員という名のインターフェースが巡回を開始し、飲み物を提供していく。この時、コーヒーや水を要求してはならない。それは汎用的なモジュールに過ぎないからだ。
私が叩くのは、機内というローカル(閉鎖)回線に限定された「地域特化型API」である。
- 九都路線: 「あごだしスープ」を呼び出す。深淵なる香りが、システム内部の疲弊したメモリを再構築する。
- 北都路線: 「ホタテスープ」あるいは「オニオンスープ」を選択。冷え切った機体(OS)を温める必須パッチだ。
地上のコンビニで購入した「おにぎり」をメモリバッファ(手荷物)から展開(取り出)し、スープという名のホット・フィックスで流し込む。最高の戦場(窓側の席)で蒼穹を眺めながら行うこのインテグレーション(儀式)は、まるで神の視点(ルート権限)を得たかのような全能感がある。
[SYSTEM_LOG: 成功確率(SUCCESS_RATE)の向上を確認。環境変数は快晴へとコンパイル済み。]
孤独な全能感と次の戦場へ
皇都を旅立つとき、どんな荒天であっても、このルーティンを実行するときには、なぜか空は常に快晴となる。
まるで私のミッション(任務)を承認するかのように、どこまでも限りなく続く蒼天。眼下には雲海が完璧にレンダリングされている。必ず。
私は神々に祝福されている。そう、強く信じることができる。
このジンクスこそが、私にとっての唯一のセーフティネットだ。
(……バハムートの囁き:愚かな……自然の理を超越したとでも言いたいのか。晴れて当然。しかしな、そこで雲に遭遇する。それは竜の巣だ。それこそ僥倖というもの。その時は…….監視用グライダーで空から落ちてきた女の子とともにダイブせよ! ダイブせよ! ダイブせよ!)
世界線を強引に捻じ曲げるバハムートの妄想(スタジオが違うぞ。つながりはあるが。)を無視しつつ蒼穹の彼方に祈りを捧げる。

窓から差し込む光(神の祝福)に目を焼かれながら、敬虔な気持ちでとある王国の宇宙軍飛行士の祈りの言葉を「小川のせせらぎ」のような声(森本レオに可能な限り寄せて)全文詠唱する。
隣席の客が迷惑そうな目でこちらを見ているが気にしてはいけない。
「小川のせせらぎ」のような声についてはここを参照するがいい
遠征先で待ち受けているのは、クライアントによる「システム導入への抵抗、あるいは仕様変更という名の嵐」であることは明白だ。しかし、この高度1万メートル(神々の領域)での儀式を完了させることで、私はその荒波に抗うための耐性(レジリエンス)を再充填する。
琥珀色の粘性(コーヒーのシミがついたネクタイ)を締め直すと、鉄の飛竜が降下を開始した。
地上へ降り立てば、そこはまた矛盾(バグ)だらけの戦場だ。
[SYSTEM_LOG: 遠征先でのタスク読み込み完了。システム・リブートまで残り数時間。]
私は静かにモニターを閉じ、孤独な全能感を胸に、再び呪いの再起動へと足を踏み出す。
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